小児科専門医試験その1 症例要約(サマリー)のポイント

小児
スポンサーリンク

小児科専門医の症例要約(サマリー)は

採点者に対して「わかりやすく、正確に、簡潔に」制限内の30行で伝えることが大事です。

どうサマリーを作成すればよいか、採点者はどう点数をつけてるかを説明していきたいと思います。

症例要約の基本

小児科専門医試験の症例要約(サマリー)は、採点者に対して「わかりやすく、正確に、簡潔に」「どんな症例か、どのように治療したか、どのように指導したか」を伝えるのが目的です。

普段書いているサマリーとは目的が異なるので丸写しすると失敗します。

まずは症例選びが重要です。

30行という制限もあるため「Simple is best」です。出来るだけ「典型的な疾患の典型的な症例」を症例を選びましょう。

カテゴリーはバランスよく記載しないといけません。症例の偏りは採点者の印象を悪くします。

と言っても症例選びを開始すると分かりますが、血液疾患は病院によっては探すのが大変です。うまく外来の3症例を使用してください。

私は外来で診断した「白血病」のため他院に紹介した患者さんを使用しました。

参考までに私が使用した30症例の一覧を掲載します。

(1)遺伝・染色体異常・先天奇形

3疾患:13トリソミー、21トリソミー、口唇口蓋裂

(2)栄養障害・代謝性疾患・消化器疾患

4疾患:急性虫垂炎・B型肝炎・1型糖尿病・腸重積

(3)先天代謝異常・内分泌疾患

3疾患:成長ホルモン分泌不全性低身長・副腎白質ジストロフィー ・新生児低血糖

(4)免疫異常、膠原病、リウマチ性疾患、感染症

3疾患:川崎病、Henoch-Schonlein紫斑病、皮膚筋炎

(5)新生児疾患

3疾患:多血症、新生児黄疸、低出生体重児

(6)呼吸器疾患、アレルギー

3疾患:気管支喘息、ミルクアレルギー、アナフィラキシー

(7)循環器疾患

3疾患:Fallot四徴症、冠動脈拡張、心室中隔欠損症

(8)血液疾患、腫瘍

2疾患:特発性血小板減少性紫斑病、白血病

(9)腎・泌尿器疾患、生殖器疾患

3疾患:ネフローゼ症候群、尿路感染症、紫斑病腎炎

(10)神経・筋疾患、精神疾患(精神・行動異常)、心身症

3疾患:ウイルス性髄膜炎、急性脳症、良性乳児痙攣

採点者は

  • 要約の簡潔さ
  • 診断のアプローチ
  • 治療の適切さ
  • インフォームドコンセント(倫理的配慮)
  • 転帰とその後の指導

の5つの項目で採点しています。

それぞれの項目が0-2点採点され、最大で10点満点です。

注意して欲しいのが「インフォームドコンセント」と「転帰とその後の指導」の2項目です。説明したことを記載しないことはないでしょうが、2項目あるので入院時の説明と退院時の説明はそれぞれ必要です。

「現病歴」の最後に、入院の目的を説明し、両親の了解を得たことを記載します。

「入院後の経過」の最後に、退院時に今後注意することなどを両親に説明し、ご了承いただいたことまでを記載します。

例えばこのように記載します。

「〜と診断したため〜の目的で入院することをご両親に説明し、ご了解いただいた。」

このような文ないと減点対象になるため注意が必要です。

次は細かい注意点を話していきます。

正しい用語を使用しよう

一番気を付けないといけないのが「正しい日本語を使うこと」

一発減点にはならないですが印象が悪くなり点数が伸びません。

書き方、用語の使用法は、日本小児科学会誌の投稿規定に準じます。

1.人名は原語

例:Fallot四徴症、ファロー四徴症ではないです。

2.薬品は「〜剤」ではなく「〜薬」が基本。商品名ではなく一般名で記載。

抗生剤 → 抗菌薬

強心剤 → 強心薬

坐薬 → 坐剤(坐剤は坐薬ではないので注意)

ソリタT1→(急速)初期輸液 商品名は用いない。

点滴→補液、点滴静注

ガストログラフィン → アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン が正式。

口元酸素→フリーフロー酸素投与。最近は「口元酸素投与」でもよいらしいが、いずれにせよ「投与」は必ずつける。

3.細菌名はイタリック

Haemophilus influenzae → H.influenzae

4.「略語」は診断名または本文の最初で日本語、(可能であればフルスペル)、略語を記載した上で使用する。

例:診断名として載せるとき心室中隔欠損(ventricular septal defect:VSD)

  その後はVSDと記載します。

5.動植物名はカタカナ(イヌ、サル、ヒト、サクラなど)

6.年齢別の呼称

      4週未満:             新生児 (性別に特別な意味がある場合のみ性別を示す)

        4週から1歳未満: 乳児    (性別に特別な意味がある場合のみ性別を示す)

        1~12歳:            男児女児

        13~18歳:           男子女子

        19歳以上:           男性、女性

7.正しい接続詞を使用する

  AとBが → AとB

  A、B、Cが → A、BおよびCが

8.~カ月、~ケ月 → ~

9.15歳男子。 → 15歳の男子

10.~週間前より → ~週前から

11.かな表記するもの

  「いったん」、「いまだ」、「いる」、「おそれ」、「かつ」、「きたす」、「ころ」、「ごとに」、

  「すぎない」、「すべて」、「ただし」、「つかむ」、「できる」、「とおり」

12.カタカナ英語は使わない

 ×「フォローした。」→ ○「経過観察とした。」

サマリー全体の注意点

1.自分が主治医として関わっていることがわかるように記載する

  記載者は小児科診療内容においては第三者ではない。

  ×「~となった。」→ ○「~とした。」

  ⇔ 他科、他院の行為は第三者。

2.治療を行ったら、必ずその前に診断していないといけない。

  ×「肺炎を疑い抗菌薬に治療を行ったが、—」

→ ○「肺炎と診断し抗菌薬の治療を行ったが、—-」

3.分野番号の傷病名にスポットを当てた内容記載とすること。

例1)循環器分野7で提出したPDAケースなのに、RDSや黄疸の内容に終始し、新生児分野のサマリーになっている。

例2)同様のケースで「日齢1にPDAは自然閉鎖を確認した。」の一文以外、PDAに関する内容が一切無い。

例3)傷病名が多数あり過ぎのため、経過を記載するだけで1頁使用してしまい、その他の内容(アセスメントや病状説明&ICなど) が記載できていない。

 ※ その傷病名に関する重要な陽性所見(診察所見も検査所見も)にはアンダーラインを引くと分かり易い。

4.可能な限り鑑別診断は記載する。あると減点されにくいです。

5.検査所見内容では、自分自身説明・解説できない様な極めて専門的な内容は記載しない。

6.検査所見内容では、本題と全く関係ない内容は記載しない。

 これら5、6は入院サマリー記載を丸写しにすると 生じ得ます。

7.検査所見内容では、陰性所見であっても鑑別等で重要な内容は記載します。

8.1頁のサマリー中に、同一内容の文章を繰り返さない。

9.退院後は○○病院、××専門外来へ送った。の様な内容で締めくくると、何も考えずに丸投げの印象となります。

→ 退院後は・・・・などに注意する必要があるため××専門外来での経過観察を行う方針とした。などがよい。

10.最初に自分で問題提示しておいて、その後その問題の結末・経過がどこにも記載されていない。

→ところであの問題点はどうなったの?ということになる。しっかり結末・経過を記載する。

11.何でも1頁ぎっしりでなくてよいが、数行空欄があると手抜きに写る。実際書くべき内容をきちんと書くと、スカスカにはならない。

12.最後に必ず読み返して、日本語の文章としておかしくないか?筋が通っているか?意味不明の箇所がないかをチェックすること。

各項目記入にあたっての注意

症例要約上の必要な項目は以下の通りです。

  • [主訴]
  • [現病歴]
  • [入院時診察所見]
  • [検査結果]
  • [入院経過]
  • [退院後の患児、家族への指示]

□ 必要に応じて

  • [鑑別診断]
  • [症例の問題点]
  • [この症例から学んだもの]

を設けてください。

「家族歴、妊娠分娩歴、既往歴」について

□ 記載した疾患に関係したpositiveおよびnegative findingsが書いてあるか。

(画一的に「特記すべきことなし」と書いていないか)

□ 必要に応じて、乳児は妊娠分娩歴を記載してあるか(新生児は勿論必須)。

[現病歴]

□ 病歴や診察所見から「何が疑われ検査、処置、投薬などが行われたのか」を念頭

において書いているか。

例:・発熱が持続するため、近医を受診、血液検査でCRP上昇を認め、抗生剤の処方

を受けるも….→発熱が持続するため、近医を受診したところ、細菌感染症の除外の

ため血液検査を施行され、CRP高値が認められたことから細菌性咽頭炎の疑いで、抗

菌薬の処方を受けるも….

[入院時診察所見]

□          必要に応じてバイタルサインを記載しているか。(とくに呼吸障害がある場合

のSpO2など)

□ 体重は、必要に応じて、「mean」であるとか、「病前体重より-%減」、新生時期であれば、「出生後から g/日増加」などの必要な表記を付けているか。

参考:脱水が問題になるときは、ツルゴールの表記より、capillary refilling time の方が望ましいです。

□ 新生児では日齢は明記しているか。

 [検査結果]

□ 検査値は、原則としてみな単位をつけているか。

□ routineに不要な検査結果を列挙していないか(診断にpositiveに結びつく検査所見のみならず、negative findingsも列挙すること)

□ 必要に応じて、診断に結びつく検査値に下線を付しているか。

参考:動脈血ガス分析は必ず100%O2など条件を確認ください。静脈の場合は酸素条件は不要ですが、heel採血は、「毛細血管血」などど記載すべきです。静脈ではPO2値は一般的には意義はないので不要と考えます。

[入院経過]

□  [診断に至った経過]、[治療経過]に分けた方がわかりやすいものはそのように記載されているか。

最後に

たくさんの資料をまとめて作成したため、うまくまとまっていない部分もあると思いますがご容赦ください。

たくさんの人が「小児科専門医」になれるように願っています。

コメント