腸管感染症には抗菌薬は必要?

感染

腸管感染症について

腸管感染症は病原性のあるウイルスや細菌などが食物や飲料水を介して摂取され、消化管の粘膜や機能が障害された結果、下痢や腹痛などの症状がみられる。

下痢や嘔吐などの急性胃腸炎症状は、日常診療でよく遭遇する症状であり、原因の多くは腸管感染症である。しかし、非感染性疾患や腸管周囲の炎症によっても同様の症状を認めるため注意が必要。

食中毒の原因は細菌性が40%(カンピロバクター25%、サルモネラ3%、腸管出血性大腸菌1%)、ウイルスが35%(ノロウイルス33%)、寄生虫が11%、自然毒が7%(※1)。

細菌性は食べ物が腐りやすい初夏~夏に多い。ウイルス性は晩秋から春の乾燥した時期に多い。

<細菌性感染症について

細菌性腸管感染症は三類感染症の①腸管出血性大腸菌、②赤痢、③コレラ、④チフス・パラチフスとそれ以外と分けて考えると理解しやすい。

三類感染症は腸管出血性大腸菌を除き、他者への感染性や社会的影響などを考慮して抗菌薬投与の適応である。腸管出血性大腸菌に抗菌薬を投与することは議論が分かれるとこだが、投与する場合は、発症3日以内の投与が望ましい。また三類感染症は直ちに保健所に届け出が必要である。

三類感染症以外の原因菌としては①カンピロバクター、②サルモネラは頻度が多いため日常診療でも遭遇する可能性が高い。

その他、③腸炎ビブリオ、④黄色ブドウ球菌、⑤セレウス菌、⑥ウエルシュ菌なども食中毒の原因菌として覚えておくと良い。

これらの菌に抗菌薬投与は原則不要であり、治療は電解質・体液の補充と補正である。しかし、以下の場合は抗菌薬投与を考慮する(※2)。

①重度の脱水、ショックや悪寒戦慄など菌血症疑い

②細胞性免疫不全(HIV、ステロイドや免疫抑制薬など)

③人工血管・人工弁・人工関節

④1歳未満、50歳以上

⑤旅行者下痢症

<三類感染症>

①腸管出血性大腸菌

②赤痢

③コレラ

④チフス・パラチフス

<三類感染症以外>

①カンピロバクター(Camplobacter jejuni)

②サルモネラ(Salmonella spp.)

③腸炎ビブリオ

④黄色ブドウ球菌

⑤セレウス菌

⑥ウエルシュ菌

どんな薬を使用するの?

原因菌がわからない時に抗菌薬投与が推奨される人への抗菌薬は何を使用すればよいかを一番よく聞かれる。

成人の場合は

クラビット(レボフロキサシン、LVFX)500mg 1T 1x 3~7日間

カンピロバクターを疑う場合(鶏肉の摂取が2―7日以内にあり)

ジスロマック(アジスロマイシン、AZM)500mg 1T 1x 3~5日間

小児の場合は(乳児にキノロン系は使用できないので注意)

サワシリン(アモキシシリン、AMPC)30-40mg/kg/day 3x 3~7日間

ホスミシン(ホスホマイシン、FOM)40-120mg/kg/day 3~7日間

※バクシダール(ノルフロキサシン、NFLX)はガイドラインに記載あるが耐性増えてきており使用しない。

小児でカンピロバクターを疑う場合(鶏肉の摂取が2―7日以内にあり)

クラリス(クラリスロマイシン、CAM)10-15mg /kg/day 2-3x 3~5日間

<ウイルス性腸管感染症について

ウイルス性の腸管感染症は晩秋から春にかけて多発する傾向に多く、伝染性が高いため手洗いができない小児や高齢者に多く、保育園や施設などでアウトブレイクを起こす。特に冬にくる小児の急性胃腸炎症状の9割がウイルス性である。

原因ウイルスとしてノロウイルスによるものが多く、ロタウイルスがそれに次いでいる。ロタウイルスは冬の乳幼児の白色便性下痢として有名。

その他、アデノウイルス(40,41型)、サボウイルス、アストロウイルス、エンテロウイルス、アイチウイルスなどが原因となる。

ノロウイルスとロタウイルスは市販の迅速キットがあるが治療はいずれにせよ対症療法になることからガイドラインでは積極的なウイルス検査は勧めていない。

ノロウイルスの迅速キットの保険適応は3歳未満、65歳以上に限られる。個人的には入院が必要な場合は隔離予防の点から施行している。

治療は脱水の防止と脱水の補正。

※1 厚生労働省食中毒統計調査(2013年)

※2 JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015‐腸管感染症

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